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(これまでの対談)

社長対談2008 ~ 辰巳渚様

1919年の創業以来、キユーピーは「楽業偕悦」を社是として、さまざまな食場面を提案してきました。そのキユーピーが、食を通じて家庭や社会にどのようにかかわっていけるのかについて、モノあまりの時代の新しい生活哲学を提唱し、豊かに生きるための提言を続けている辰巳渚氏と当社の鈴木豊が対談しました。

辰巳
お目にかかれて嬉しゅうございます。今日は率直なお考えをお聞きしたいなと思って参りました。よろしくお願いいたします。
鈴木
こちらこそよろしくお願いします。今回の対談にあたって辰巳さんの本を何冊か読ませていただきました。こうした本を書くときは、全体の趣旨をまとめられて、一章二章といった章立てを考えてから書いていくのでしょうか。
辰巳
そうですね。私の場合あらかじめ章立てまで考えて、何を書くかまで詰めてから一気に書くことがほとんどです。
鈴木
どうしてそのようなことをお聞きしたかというと、辰巳さんの本を読ませていただいて、企業の戦略の立て方に通じる部分があると感じたのです。
戦略には、自然と動きが出るように描かれている戦略と、タイトルは立派だけれども、具体的に何をしたらよいかわからないようなものがあります。辰巳さんの本を読ませていただいて、後者のようなものには「はじめに」が書かれているだけで、動き出すための一章二章といった具体的なことを感じさせるものがないのではないか、と思ったのです。
辰巳
具体的に動く内容がイメージされていないということでしょうか。
鈴木
そうです。たとえば、「これからは自分たちが自覚を持ってスパイラルアップしながら成長していく」という目標を立てたとします。その目標は「はじめに」ですから、実際にどうやって進めていくのかについては、一章二章とまとめていく必要があります。ところが「はじめに」だけで一章二章も考えたと思ってしまっているのです。
そこで作り直しを指示すると、この「はじめに」だけを丁寧に作り直します。総論としてのイメージは分かりやすくなってくるのですが、やはり動き出すための各論が感じられません。どんなに立派な総論があっても、実際に動き出せなければ、結果を出すことにはならないでしょう。
戦略を立てるときには、動き出すまでをしっかり踏まえていなければ、一人ひとりが一生懸命やっても、その行動が目的に伴った行動でないために報われないことになってしまいます。そういった点をリーダーに理解してもらうことが新しい行動につながっていくと考えています。

優先順位をつける

辰巳
最近は家庭でも、がんばりすぎてしまってどれも中途半端になってしまうとか、方向が違って空回りしてしまうといったことが起きていると感じています。それで、「優先順位をつけましょう」と言っています。
例えば、朝お弁当をしっかり作ってあげなければいけないと考えているお母さんがいます。でもそうすると子どもと一緒に朝ご飯を食べる時間がなくなってしまうので、どうしたら良いのか分からないと悩んでいるのです。その時に、「どっちも大事」ではなく「どっちがしたい」のか。朝ごはんを一緒に食べたいのであれば、その時間はお弁当を作れないと、「できること」と「できないこと」とを明確にしてみませんかという話をしています。
鈴木
本を読んでいても、辰巳さんは「自分の考えをしっかり持つこと」を重んじていて、そこが原点だということを感じました。私は会社ではそれを原単位といっているのですが、そういった原単位をきちっと持って、成長を積み上げていくための土台を作ることが重要ではないかと考えています。
辰巳さんが言われているのは、何が必要で何が必要でないかを、その時はその時で失敗しても良いからはっきりさせろということですよね。そうすれば、失敗しても、次にどんなことを学べばよいかを考え、成長進歩していくことにつながります。
物事に対して、自分の中で優先順位をつけることが大切で、単なるハウツーではなく、自分の生き方の原点を探り出していくことが必要ではないかと思います。
辰巳
私は最近、本でハウツーを書くだけでは気づきと行動につながらないと考えるようになり、「家事塾」という実際に行動していく場を立ち上げました。家事のテクニックを学ぶのではなく、家庭や自分自身を経営していくとはどういうことなのか、実践しながら自分の考えを築き上げていく機会にしていきたいと考えています。というのは、家庭という単位が、今、危機的な状態にあると感じているからです。キユーピーは食という家庭の根幹部分を担っていますが、そんな今の家庭に向けて思うこと、会社として働きかけていることはあるのでしょうか。

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