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(これまでの対談)

男性が家庭にかかわれる時間の使い方

~社長対談2009:小室淑恵様~

小室
そうしたいろいろな考え方を持ち寄るのがダイバーシティですよね。ダイバーシティというと職場における少数派であった「女性の活躍推進」といったテーマがよく注目されます。それはもちろん大切なのですが、今は育児をしたい男性が、女性以上の少数派としてロールモデルがなくて苦しんでいるそうです。若い男性の8割が育児をしたいと考えているというデータもあって、男性の育児支援をするファザーリング・ジャパンというNPOも出来ています。
鈴木
キユーピーでも最近になって男性が育児休業をとり始めています。ただ、本当に自分が育児をやりたいと思ってとっているのか、家庭の事情があって困ってやむなくとっているのか、それが分からないのですけど、そのあたりはどうなのでしょうか。
小室
両方いらっしゃいます。奥様の体調といった状況でとった人もいれば、とりたくてとりたくて入社以来育児休業制度をチェックしてきたと言う男性もいます。育児にかかわれるのは今だけという貴重な時間として捉えているのです。
また、最近は幼い頃に男親がどれだけかかわったかが子どもの発育に関係があるという論文もアメリカでは出てきています。今の日本もそうですが、核家族化が進むと、家庭内で母親が育児の大変さを理解してもらえる相手がいない状況が生まれてきます。一方で男性も親世代と同居していた時代のように家庭内で仕事の大変さを話し合える相手がいません。そうしてお互いが自分の大変さを主張して相手を責め合ってしまうことが、子どもに悪影響を及ぼしてしまうのです。
ですが、両方が育児と仕事をするようになると、お互いの大変さを理解することができます。
鈴木
お互いに共有することによって理解しあい、その両親の雰囲気が子どもに伝わるということですね。確かにそうかもしれません。
小室
子どもの心が安定するには身近な親が安定している必要があるのです。これまでは育児やワークライフバランスというと女性がクローズアップされることが多かったと思います。ですが、これからは男性の働き方の見直し、家庭にかかわれるような時間の使い方の見直しが必要になってくるでしょうね。
ところで、御社では残業は多くありませんか。

ワークライフサラダ

鈴木
実はかなり多かったのです。ですから何とか減らしたいと思っていました。会社が取り組もうとすると、ついつい経費削減のためという目的になってしまいがちなのですが、そうではなく、一人ひとりが自分の人生について一生懸命考えることを突き詰めていくことが重要ですよね。そこで、一人ひとりがワークライフサラダというものを考える取り組みを進めています。
これは一人ひとりが今の自分の状況と、自分がどうなりたいのかをサラダにして表現してみるものです。先ほどお話した「3つのわ」の、「わくわく」するために到達するイメージになるでしょうか。
さらに一人ひとりがそのサラダをプラットフォームに乗せていきます。そうしたお互いのサラダを発表する場をサラダバーと呼び、さらにおいしいサラダを考え、作っていくことをやり始めています。
小室
これは素晴らしいですね。先ほど紹介したファザーリングジャパン代表の安藤さんはワークライフバランスのことを「寄せ鍋」と呼んでいるのですが、サラダというのが御社らしくスタイリッシュで、素敵です。とてもぴんときました。
鈴木
この取り組みは、「わくわくワーク☆きらきらライフ」略して「わく☆きら活動」と呼んでいます。人事本部の若手メンバーが、今おっしゃった安藤さんの講演でその「寄せ鍋」の話を聞いて、キユーピーならばどうなるだろうかと考えてサラダにたどり着いたのだそうです。こうしたアイデアが現場から出てくるようになることで、自分たちが思った以上にいろいろな「わくわく」感が生まれてくるようになるのだと思います。
小室
そうやって社員が輝いていないと、良い商品は生まれませんよね。私は主婦向けのセミナーなどでは、商品を買うときには長時間労働の企業からは買わないほうが良いと言っています。社員が疲れた時間帯に製造していたり、企画を考えたりしているようでは良い商品は作れないはずです。ですから、社員の働き方が生き生きしていることが何よりも大切ですと話しています。
御社も取得されている「くるみんマーク」もそうした会社の姿勢を示すものですし、ワーキングマザーは自分も仕事の現場を知っていますから、商品だけでなくそうした会社の姿勢を見て買うようになっています。

続けていけるような仕掛けや仕組みを考える

小室
一方で男性が、最近は妻に代わって買い物をする人が増えていますので、男性の視点、男性が買いやすい商品や売り場ということも考えた方が良いですよね。男性は上の棚の商品を手にしやすいといった話もあります。
また、育児をきっかけに食材に対する意識が変わってしまって、買うものががらりと変わるということもあるようです。育児休業に限らず、男性が仕事以外の時間をより長く過ごすようになると、そういった新しい発見をする機会にもなりますね。
鈴木
今までは触れていない世界を見て、やってみたら面白さがわかって、そこで視点が変わるということかもしれませんね。キユーピーはベビーフードから介護食まで手がけていますので、そういった場面の気持ちを感じて作ることはとても重要なことだと思います。
小室
今おっしゃった介護についても、あと15年もすると介護で休まなければならなくなる団塊ジュニア世代の男性が増えてきます。育児で定時に帰る女性よりも介護で定時に帰る男性の方がずっと多くなるかもしれません。そうした時の労働時間のあり方について、企業は今から真剣に捉えて考えていく必要があると思います。
鈴木
確かにそうかもしれません。今日お話をお聞きしていて、何かそうやって新しい発想が生まれたときには、それを一度で終わりにせず、続けていけるような仕掛けや仕組みを考える必要があると改めて感じました。
キユーピーでは有給休暇の取得率が2007年は5割弱だったのが2008年は6割になりました。これは年初に休む計画を立てて申請するようにしたためで、それが仕掛けとして機能したためだと考えています。
男性の育児休業についても、制度はあったにしても最初にとった男性は革命的なことだったと思います。そうして育児休業をとった人が「良かったよ」と周囲に伝えていくことで、後からついていく人が増えていくような環境作りをこれからも続けていきたいですね。

2009/3/19 渋谷本社にて

小室淑恵(こむろ よしえ)氏 プロフィール

株式会社ワーク・ライフバランス代表
1975年東京生まれ。2004年度ウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞。育児、介護、うつ病などによる休業者の復帰を支援する仕組み「armo(アルモ)」を開発。ワークライフバランスに関する著作多数。一児の母。理想的なワーク&ライフを過ごす第一人者として多くの人から支持を受けている。


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