OPEN the KEWPIE 2010

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社長対談

介護食に求められるもの

鈴木
これからの介護食に一番求められていることは何でしょうか?
大越
安全に食べられるというのはもちろん大切なのですが、介護する人が心からおいしいと思えて、「おいしいよ」と薦められることが必要だと考えています。
また、自分で食べることのできる人には自分で食べてもらうことも大切です。私は「見守る」という表現が好きなのですが、一緒に食卓を囲んで会話をしながら、周囲が気配り、目配りをして見守ってあげる。そんな食卓につながる介護食があれば良いですね。
鈴木
本当にその通りです。私たちの経営理念は少々長いのですが、それを一言の企業メッセージとしてまとめたのが、「愛は食卓にある。」です。私はこのメッセージがとても気に入っています。今、おっしゃられたことは、まさに「愛は食卓にある。」ということになるのだと思います。
大越
お年寄りの場合、朝は食べることができても、体調次第で午後になると食べられないということがあるかもしれません。その時に食べてもらうための工夫をする、食事の介助を含めた「食介護」が大切になってきます。これからはそうした介護食を利用する人の姿勢が重要になってきます。大切なのは、食べてもらうことを楽しむ姿勢だと思います。

誰にでも食べやすいユニバーサルデザインフードをめざして

鈴木
少し話は変わりますが、以前デンマークを訪問した際に、デザイナーの方の話をお聞きしました。デンマークはデザインで有名な国ですが、どういった考え方でデザインをしているか知りたかったのです。その方が最後に言われた「Do not design for handicap」という言葉が印象に残っています。
ハンデキャップを持つ人のためのデザインはない。あるゆる人のためにデザインをする、ということを根本において欲しいという考えなんです。
大越
それがユニバーサルデザインということですね。
鈴木
そうなんです。ユニバーサルデザインは、本来皆のためのデザインだということを改めて考えさせられました。キユーピーでは「やさしい献立」というシリーズを「介護食」という名前でご提供しています。でもそうすると、介護を受ける方しか食べない食品という印象になってしまいます。
先日、歯医者さんと話をする機会があり、入れ歯を作る際に歯茎とぴったりあわせるには、なじむまでは硬いものは食べず、やわらかい食べ物で慣らす必要があるとお聞きしました。
そうした時に歯医者さんが薦めるのは「ゼリー、プリン、おかゆ」なのだそうです。でもそれだけではなかなか患者さんに満足してもらえない。そこで介護食を食べることを薦めたいと言われたのです。そんな発想は自分にはありませんでしたので、ビックリしました。後日サンプルを提供してみなさんに食べてもらったところ、どうやら「おいしくない」という先入観があったようで、「おいしい」と言っていただけ、患者さんのために採用してもらえるようになりました。
大越
矯正歯科の方も同じようなことを考えていて、矯正時に合う食べ物を開発したいと相談されたことがあります。ですから、介護や高齢者といった限定をせずに「おいしく食べられるもの」「その人の状態にあった食べ物」と考えて作っていって欲しいですね。誰が食べてもおいしく食べやすい食品を作ってください。
鈴木
その通りだと思います。私たちは家庭用から業務用、ベビーフードから介護食まで取り扱っています。経営理念にあるように「おいしさ、やさしさ、ユニークさ」を通じて食生活に貢献していくのが、私たちの使命として捉えています。
これからも、今回のようなアドバイスをしていただきながら、私たちを鍛えてほしいと思っています。それが、より良い、そして満足のいく商品をお客様に届けることにつながっていくのだと思います。

2010/4/1 渋谷本社応接室にて

大越ひろ(おおごし ひろ)氏 プロフィール

日本女子大学 家政学部教授
1970年日本女子大学家政学部食物学科卒業。同大助教授を経て、1999年、教授に就任。食品のかたさや飲み込みやすさなどの物性研究を通じて、高齢者にとって安全でおいしい食事の開発に取り組んでいる。日本調理科学会副会長、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会理事、日本フードスペシャリスト協会理事。


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